住まいの性能を客観的に評価することの重要性

住まいを建てる際に、各住宅メーカーや工務店に設計・建築依頼をすることになります。
ただ、この際に住まいにおけるさまざまな機能や性能について入念に確認する方がどれくらいいるのでしょうか。
また、建てる側が安全面や機能面についてアピールしたとしても、それがどれだけ信頼できる建物なのかは、一般の方からすると定かではないのです。
結局、家の性能についてきちんと理解できていないままに建設が行われるケースがほとんどで、何か問題が生じてから嘆く事態に発展することが散見されます。

そのため、建てる側にとっても、建ててもらう側にとっても家の性能についてわかりやすい“共通認識を持てる事項”があると、その後の齟齬が起きる可能性がグンと低くなります。
そこで活用したいのが「住宅性能表示制度」です。この制度は、第三者機関(登録住宅性能評価機関)が品確法(住宅品質の確保促進に関する法律)にもとづく住宅の性能表示にもとづいて数値で判断するので、建てる側の恣意が働かない客観的な判断を得ることができます。

新築建物については、この法律で10年保証は義務づけられていますが、性能表示は義務ではなく任意の制度なのです。
ただ、わかりやすく自社の建物の性能を示すことができるため、多くの大手ハウスメーカーなどでも積極的に活用されています。
たとえば、広告などで「耐震等級3」という表示を目にすることがあると思いますが、それが「住宅性能表示制度」にもとづく表示になります。

住宅性能表示制度で測る10分野の性能

住宅性能表示制度は、住宅として持つべき品質・性能を10に分類し、それぞれの分野でランク分けを行います。また、表示通りに建築しているかの検査も徹底されています。また、ランクをつけてもらうには、建築主による申請が必要です。施主にとっては、期待する性能が明確にわかり、それが本当に実現できているのかをチェックできるので、双方にとってズレの少ない制度といえるでしょう。

住宅性能表示制度では、10分野32項目にわたって住まいの性能を評価しています。その10分野とは、具体的に次の項目を指します。

【住宅性能表示制度の10分野】

  1. 地震などに対する強さ(構造の安定)
  2. 火災に対する安全性(火災時の安全)
  3. 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
  4. 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
  5. 省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
  6. シックハウス対策・換気(空気環境)
  7. 窓の面積(光・視環境)
  8. 遮音対策(音環境)
  9. 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
  10. 防犯対策

※参考元:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会

また、住宅性能表示制度は「長期優良住宅制度」(http://sumaino.co.jp/column/046へリンク)の活用にとっても重要です。長期優良住宅は、2009年から施行されていますが、認定されると、所得税の住宅ローン控除や登録免許税の軽減、固定資産税の軽減など多くの税制上のメリットがあります。長期優良住宅の認定においては、住宅性能表示にもとづき、耐震等級2以上に加え、耐久性、配水管維持管理、省エネルギー性などの項目でトップランクの基準をみたしていなければならないのです。

ご自身の家に求める性能の優先順位を

さらに、住宅性能表示制度を活用すると、以下のように業者間のトラブルをなくせるというメリットもあります。

【住宅性能表示制度活用による業者間にトラブル回避のメリット】

  • 性能表示をするには建築主の申請が必要なので、性能に対する意識が高い業者がわかる
  • 建築確認検査以外に、工期中4回の現場検査を行うので手抜き工事を防止できる
  • 業者の設計力の目安になる
  • 業者との間でトラブルになったときは、各地の弁護士会に指定住宅紛争処理機関がある

上記のように住宅性能表示制度は、多くの性能をチェックすることができることに加え、トラブルを未然に回避するうえでも役立ちます。
ただ、すべての項目で性能のポイントが高ければもちろんいうことはありませんが、すべての項目をクリアするとなるとかなりのコストがかかります。
さらに項目の中には両立が不可能なものもあるので、覚えておきましょう。たとえば、窓を多く広くして採光性を高めれば、その分強度が弱くなり、耐震性が低くなることもあるのです。

つまり、すべてのポイントが高い必要性はなく、施工主の希望に沿った性能が備わっていれば問題ないといえるでしょう。
大事なのは各種の性能の中で、土地や周辺環境、建築費用や自分の要望などを考慮して性能に優先順位をつけられているかどうかということです。
すべてが高ポイントであれば、よい家が建つわけではありません。
自分の家の性能で何を重視するのかを明確にし、それがきちんと備わっているかをジャッジすることが大切なのです。