注文住宅を建てる際に地盤改良が必要な土地とは

災害による被害が想定される軟弱地盤

液状化の危険性がある土地と見極める際の注意点 でもご説明しましたが、注文住宅を建てる際には土地の強度が重要になります。建物に応じた強度を持つ土地でなければ、災害時などの際に倒壊の恐れすらでてきます。特に木造住宅は地盤が弱い土地だと、地震による揺れを大きく受けてしまい、全壊や半壊などの甚大な被害を受けてしまう危険性があるのです。

弱い地盤に家を建てる場合は、建築前にまず地盤改良が必要になります。2000年に行われた建築基準法の改正で、建物の基礎は地盤の強度に合わせて作ることが定められたため、地盤の強度の算定のために地盤調査を行うことが必要になりました。弱い地盤に家を建てると、大きな地震の際に土地が液状化したり、土地の一部だけが傾きながら沈む不同沈下(ふどうちんか)が起きたりする危険性があります。そのため、災害に強い家を建てるためにはまず、地盤調査を行い、そのうえで強度に応じた対策を講じることが大切です。

災害時に被害が想定される弱い地盤には、次のようなものがあります。

【地盤改良を検討すべき弱い地盤】

  • 軟弱地盤…多量の水分を含んだ粘土質などからなる堆積層で、海岸や河川沿いに多い地盤
  • 砂質地盤…通常は良質な土地だが地震になると液状化しやすい、地下水位が高い地盤
  • 異種地盤…造成工事で土地を削る切土と削った土を盛る盛土が行われた地盤
  • 盛土地盤…水田などに利用されていた低地に盛土をした地盤

調査データに基づいて適切に判断することが大切

現在、家を建てる際はまず地盤調査を行うことが基本となっています。
地盤調査では、まず建物の重さに地面が耐えられるかという「地耐力(ちたいりょく)の検査」を行い、一般に1m2あたり3tの重さに耐えられない場合は軟弱地盤と判断されます。
地盤改良工事の必要性を判断するには、地耐力検査の他に「周辺地の調査」も必要です。
周辺が埋め立て地であったり、陥没などの被害を受けたことがあったり、造成工事の際に何かトラブルがあったり、ひび割れしている箇所があったりしないかなど、周辺の土地環境を調べることで地盤の抱えるリスクを判断できます。br>こうした検査や調査を総合的に判断したうえで、地盤改良が必要かどうかを最終ジャッジします。

地盤調査の方法としては、スウェーデン式サウンディング方式(SS方式)が一般的です。
この検査には自沈層の検査があり、25kg・50kg・75kg・100kgの重りを使ってどのくらい土地が沈むのかを調査し、必要な基礎工事の種類や地盤改良工事の必要性を判断します。
一定数値を下回る場合は、地盤改良工事が必要になります。
また、より詳しい検証が必要になった場合には、機械で土地に穴を掘って調べるボーリング調査を実施することもあります。

また、調査後は地盤調査報告書が作成されます。
調査データは数値で示されており、地盤改良が必要かどうかの基準値も定められているため、ある程度の目安がつきます。
ただ、個々のデータにこだわりすぎるのもよくありません。
なぜなら地盤補強が必要かどうかは、地盤全体の強度を考慮して判断する必要があるからです。
自沈層はその大きな目安になりますが、プロによる総合判断にお任せすることをおすすめします。

土地の強さに応じて地盤改良を行いましょう

家を建てる際に、土地の強さが十分でなく軟弱地盤であると判明した場合には、地盤改良を行いましょう。

よい家を建てようと思うなら、その真下で建物を支える土地の強度について事前に調べることは必須条件といえます。地盤が強い土地かどうかを事前に調べ、もし弱い土地であると判明したなら、その土地の強さに応じて地盤改良を行いましょう。日本では大きな地震が頻発しているだけに、どの地域に住んでいても、いつ災害に巻き込まれるかはわかりません。だからこそ注文住宅を建てる際にも、根幹を支える土地への対応を怠らないようにしましょう。

傾斜地に注文住宅を建てるメリット

急勾配の傾斜地でも家は建てられます

注文住宅を建築するときに、気に入った土地が坂道の急勾配の途中だったというシチュエーションは珍しくありません。
「家を建てるにはちょっとなぁ」と尻すぼみしてしまう方も多いようですが、実は傾斜地でもうまく設計することによって、快適な家を建てることができるのです。国土が狭く山地が多い日本では、傾斜地と呼ばれる高低差のある土地が数多く存在します。
そのため、傾斜地であっても立派で機能的な家を建てる技術に長けています。
むしろ、傾斜地ならではのメリットを生かして家を建てたいという人も多いくらいです。

ただし、傾斜地には平地にはない特有の危険が潜んでいることもまた確かではあります。
そのため、土地の安全性の確保と設計における工夫は重要なのです。現在、改正宅地造成法が施行されており、傾斜地の宅地造成の仕方は厳しく定められています。
すでに造成されている土地の場合は、改正法に従った造成がなされているか確認しましょう。

万が一、造成前であれば地震や大雨に備えて斜面の土砂崩れを止める擁壁工事を行う必要があります。
傾斜地に家を建てられるように斜面の一部を平らに削る「切土」や、低い土地に土を追加する「盛土」をする場合もあります。
そして、「擁壁」という土の滑り止め工事をすることが不可欠です。
加えて、軟弱地盤であれば、別途「地盤改良」も行う必要があるでしょう。
ただ、こうした問題をクリアすれば、あとは設計の工夫で個性的で素敵な家を建てることも可能なのです。

傾斜地に家を建てることのメリットとは

平地に比べて傾斜地の住宅は「坂道の上り下りが辛い」「車の駐車が大変」「物を落とすと転がってしまう」「子どもやお年寄りが転倒しやすい」「雪が凍った際のスリップの可能性が高まる」などのデメリットが存在します。
ただ、反対に平地に建てられた一般の住宅にはない、傾斜地ならではのメリットも数多く存在するのです。

傾斜地の家ならではのメリット

素晴らしい景観が楽しめる傾斜地は周囲に美しい自然環境がある土地が多く、高低差による美しい景観を楽しめます。遠くまで見わたせるリビングやオープンテラスをつくることで、家の中にいながらご自身の住む街を眺望できます。
日当りがよい傾斜地では隣家との段差があるため、日当りを遮られません。南向きに建てれば日の出から日の入りまで、ずっと太陽の光を家の中に取り込むことがでます。日照を大事にする人にとっておすすめです。
土地を安く購入できる擁壁・造成工事がかかる一方で、土地自体は平地よりも値段が安くなっているケースが多いといえます。同じ予算なら平地よりも広い家を建てることもできるでしょう。
容積率が緩和される傾斜を利用して地下室をつくれます。法が定める条件をみたした地下室であれば「容積率の緩和措置」が適用され、地下室の床面積から住宅の延べ面積の1/3まで、もしくは20m2のいずれか小さいほうを容積率計算対象床面積に算入しないことも可能です。

上記のようにデメリットと思われていた傾斜も、考え方を変えればメリットとして捉えられます。特に車を所有している人であれば、傾斜を利用したガレージの建設も可能です。地下車庫は、住宅と車庫を合わせた延べ面積の1/5まで、もしくは30m2のいずれか小さいほうを容積率計算対象床面積に算入しないことができるため、平地にガレージをつくるよりもスペースを利用できます。

アイデア満載の傾斜地を活かした土地活用

上記のように斜めである特性を利用すれば、快適な居住空間を創出できるだけに、設計の際の工夫は不可欠だといえるでしょう。
平地に建てる際とは異なる設計の必要性があるので、傾斜地に注文住宅を建てる際には、以下で紹介する工夫をふんだんに盛り込むようにしましょう。

傾斜地の家ならではのメリット

地階のスペースを利用する傾斜地特有のスペースを利用して地階をうまく活用しましょう。地階に車庫スペースをつくれば建物を広くでき、さらに地下空間なのに採光もある部屋を設けることも可能です。
ウッドデッキを二階に一階部分を広く設計すると多額の造成費がかかるケースもあります。それを回避する方法として、一階部分を小さくして居住空間を二階以上設ける方法が挙げられます。景観を楽しむために傾斜部分に大きくウッドデッキを張り出すというのもおすすめです。
傾斜を活かした階層に斜めの土地をいかして、各フロアの階を設計することも可能です。一般住宅の一階・二階よりも段差が緩やかな、中二階のようなフロアを持つといった独自デザインの家を建てることもできます。
大きな窓を設置する二階以上の窓にはワイドな掃き出し窓を選択して大開口にすることで、眺望を満喫できます。平地だと近隣の住宅からの視線が気になることも多いですが、傾斜地であればそれを緩和する設計も可能です。

傾斜地だと周囲の相場に比べて土地の値段が下がる傾向があり、費用面において利点があります。
そのため、傾斜地をあえて選び、その特性を活かした家づくりでお得に注文住宅を建てるのも賢い方法だといえるでしょう。
工夫次第でさまざまなアレンジができるだけに、注文住宅を建てる際の土地選びにおいては、傾斜地も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

土地選びにおいて日当たりや日照時間は重要です

土地の方位や日当たりを見る際に必要なこと

戸建住宅を建てる上で重要なポイントとなる日当たり。太陽からの日差しが降り注ぐ家は室内が明るく和やかな雰囲気を生み出すだけでなく、洗濯物が乾きやすいなど、ご自宅の印象面や機能面などに大きな影響を与えます。
ただ、家を建てた後にリビングやベランダの日当たりが良くないと気づいても後の祭りとなってしまうため、土地探しの段階で方位や日当たりを意識して選ぶことは必要不可欠なのです。
では一体、土地選びの際に日当たりにおいてどのような点に気をつければいいのでしょうか。

土地の方位に関しては「南向き」が人気の傾向にあるようです。北半球にある日本は赤道よりも北部に位置しています。
そのため、東から昇った太陽はずっと日本の南側を照らし続け、最後に西に沈んでいきます。
反対にオーストラリアなどの南半球では、「北向き」の方が日当たりがよいというわけです。
日本で家を建てるなら、南向きの方が日当たりを確保できる可能性は高まりますが、周辺環境や隣地の状況によっては必ずしも日差しを確保できるとは限りません。

また、土地選びをする際は「太陽高度」にも注意が必要です。太陽が昇る高さを示す太陽高度は、季節によっても大きく異なります。
夏場は日が高く日照時間も非常に長くなりますが、それだけを判断基準にしてしまうと痛い目に遭います。
とても日当たりが良いと思って決めた土地が、冬場になったら、あまり日が当たらなくなってしまったというケースは珍しくないのです。
このように土地だけを見たり、季節や時間帯を意識していなかったりすると、土地選びで後悔するはめになるかもしれません。

土地探しをするうえでチェックすべきポイント

では具体的に土地探しの際に、何をチェックすればいいのでしょうか。方位や日当たりに関して確認すべきポイントについてご説明します。

まず方位についてですが、前述したように南向きだから日当たりがよいと決めつけてしまうのは危険です。もちろん南向きの方が日当たりのよい土地である可能性は高まりますが、南向きの土地の場合、南側が道路に面しているケースが多いため玄関が南側になることが多い傾向にあります。そうすると一番、日差しで明るい印象にしたいリビングの窓が狭くなり、南向きの恩恵をあまり賜れないというケースもよくあります。そのため、その土地の日当たりをしっかり把握したうえで最大限に家を明るくできる工夫を設計段階で盛り込むことが重要なのです。

そして、もう一つが太陽の入射角度です。1年の中で太陽がもっとも高く位置する夏至は約80度、春分、秋分は約55度、そして冬至は約30度となります。太陽が高い夏場は比較的、どの家でも日当たりがよくなりますが、冬場に関してはそうはいきません。つまり、その土地の日当たりをチェックするには、冬至の一番入射角度が低い時にどの程度の日当たりになるかを見る必要があるのです。土地選びの際には、以下の日当たりについて確認事項をチェックしてみましょう。

【日当たりを意識した土地探しのチェックポイント】

  • 南向き、北向きだけで判断せず、実際にどのくらい日が当たるかをしっかり見る
  • 周辺の環境 (マンションなど日差しを遮る高い建物がどの程度あるのかなど) を確認する
  • 南側の隣地の状況(建物などの高さ)を欠かさずにチェックする
  • 太陽の入射角度が低い冬場にどこまで日差しが入ってくるかを入念に調べる

日当たりが悪い土地の場合は工夫でカバー

日当たりが悪い家は、精神面・健康面などにおいても悪影響をおよぼすこともあります。
自宅内で日の光を浴びられる爽やかな暮らしを送るためにも、土地探しの段階でしっかりと見極めることが不可欠といえます。
ただ、日当たりのいい土地は価格が高い傾向にあるため、予算内で理想的な土地を見つけることは簡単ではありません。泣く泣く日当たりをそこまででもない土地を選択せざるを得ないケースも出てくるでしょう。

しかし、日当たりがあまりよくない土地でも間取りなどを工夫することで、必要な日差しを確保することは不可能ではありません。たとえば、家族が集まるリビングを日が当たる2階にするのはいかがでしょうか。
さらに、2階の日差しが入ってくる部分と1階部分を吹き抜けにすることで1階にも日が差し込むようになります。どうしても日が当たらない箇所は間接照明を用いましょう。明るさをカバーできる工夫をすることで、日当たりの悪さが気にならなくするのも一つの方法です。

その他にも、中庭を設けたり、天窓をつけたりするなど、注文住宅であれば日が入るようにする工夫をいくらでも盛り込むことができます。
土地選びの際に日当たりがよい土地を確保することも大切ですが、日当たりがあまりよくない土地であっても、注文住宅ならではの柔軟な対応で快適空間を創出することが可能です。
注文住宅を建てる際には、その土地の日当たりについて詳細に把握したうえで、住むうえでベストな設計を模索することが大切なのではないでしょうか。