江戸城を中心に4つに分類されるかつての城下町
日本の首都であり、政治・経済・文化のすべての中心地ともいえる街・東京――その中でも特別区と呼ばれる23区は人・物・金の流れが特に活発なエリアです。日本の国土の0.16%しかないにもかかわらず、全人口の実に7%に当たる約936万人(※)が暮らしています。国内外から多くの人が集まる日本の中心エリアですが、首都機能としての始まりは徳川家康が江戸幕府を構えた江戸時代まで遡ります。
265年間と長期間にわたり、日本を統治した江戸幕府の中心は現在の皇居がある江戸城でした。江戸城を中心に城下町が形成され、それぞれの地域ごとに独自の文化が根づきました。それは都の名が江戸から東京に変わった現在においても、その時代の名残が見られるものがあります。その1つに挙げられるのが、エリアごとの区分です。かつて城下町から発展した都市は、城を中心に城東・城西・城南・城北と分けられます。それは東京23区においても例外ではありません。
皇居のある千代田区を除いた22区は、行政区画としての明確な範囲の定義はないものの、現在でも東西南北の4区画に分類されています。同じ23区内においても城東・城西・城南・城北のそれぞれのエリアで地価や住民層、土地柄などが異なるのです。そのため、注文住宅を建てる際には大まかなエリアの特徴を知っておく必要があるでしょう。では実際に4つのエリアごとにどのような地域の違いがあるのでしょうか。
※東京都総務局統計部の平成28年6月のデータより
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/jsuikei/js-index.htm
下町情緒溢れる街並みの城東・城北地区
4つのエリアを所得ベースで大まかに2つに分類すると、城東・城北の「庶民層が多いエリア」と城西・城南の「富裕層が多いエリア」に分けられます。城東・城北地区は住宅における核家族の比率が高く、多くの家族連れが暮らしている点が特徴です。いわゆる下町と呼ばれるエリアが数多く存在し、長年にわたりその地に暮らす方も多いことから、昔ながらの地域性を大切にした情緒溢れる街並みが広がっています。また、城西・城南に比べて地価が安い傾向にあるため、他県からも比較的に移り住みやすい環境でもあります。
城東エリアは中央区、台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区の6区です。銀座がある中央区は日本でもっとも地価が高いエリアのため例外的ですが、その他の5区は江戸の名残を感じさせるような庶民的な住宅が多いという特徴があります。銀座の他にも、日本橋、浅草、上野、錦糸町、お台場など集客力のあるスポットが存在し、東京スカイツリーなど観光名所も多いのも魅力の1つです。また、有明の湾岸エリアは東京オリンピックの開催予定地になっていることから、今後の発展も期待されています。東京の新旧の良さが融合したエリアといえるでしょう。
一方の城北エリアは、文京区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区の6区で構成されています。規模の大きな街といえるのが、池袋、赤羽、北千住くらいしかなく、エリアの大半は住宅地が占めています。約9割が山手線内で文教施設が多い文京区や、繁華街・池袋を中心とした豊島区を除くと庶民的な家庭が多いのがエリアの特徴です。23区内で比較的に地価が安く、都心へのアクセスもいいことから、都内でも家を建てやすいエリアになります。板橋区のハッピーロード大山商店街や北区の東十条銀座商店街など、主婦の味方となる地域密着型の商店街も多く存在します。
閑静な住宅地が広がる城西・城南地区
城東・城北のエリアに比べると高所得者層が多く、都心の中心地により近いエリアが城西・城南です。新宿や渋谷などの副都心を中心に繁華街が多いイメージがありますが、品が良く閑静な住宅地が多く建ち並んでいるのが特徴です。アクセスの良さや環境面などを考えると非常に理想的な住環境が整っていますが、その分、城東・城北の地域に比べると地価も高い傾向にあります。そのため、狭い立地を最大限に工夫する狭小住宅も非常に人気があるようです。
城西エリアは新宿区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区の6区です。世田谷区を筆頭に都内でも有数の住宅地が存在するこのエリアは、いわば都内一戸建てを目指すご家族にとって憧れの地でもあります。中央線、京王井の頭線、東急線東横線、東急田園都市線、大江戸線などの人気路線の沿線にあり、都市部のどこに行くのにも便利なアクセスの良さもポイントの1つ。世田谷区(23区1位)、練馬区(同2位)を中心に人口が多く、単身の若者からお年を召した方まで多くの世代が暮らしています。老若男女を問わず人気のエリアといえます。
港区、品川区、目黒区、大田区の4区で構成される城南エリアも、洗練された街並みが多く建ち並ぶ地域です。特に高所得層数が全国1位である港区は、白金、赤坂、青山、麻布など超がつく高級住宅地が多く存在します。その他の区も品川区の東五反田、目黒区の自由が丘や中目黒、大田区の田園調布など商業地でありながら、ネームバリューのある住宅地としても古い歴史を持っており、高い人気を誇っています。地価が高めな点は否めませんが、城南エリアは全体的にお洒落さと住みやすさの両方を備えた地域です。
上記のように同じ23区内で比較しても、城東・城西・城南・城北のエリアによって住環境は異なります。23区内で注文住宅を建てることを検討するのであれば、地域ごとの特色をあらかじめ押さえておくと、土地選びの際に大いに役立つでしょう。