地震レポート

地震大国日本ならではの耐震への取り組み

日本はいわずと知れた世界でも有数の“地震大国”であることは、日本人であれば誰もがご存知のことかと思います。第31回コラム(土地選びの際にチェックすべき地域危険度とはへリンク)で注文住宅を建てる際には土地選びに気をつけるべきであることをご説明しましたが、地震が起きた際の建物の強度についても同様に気を配るべきだといえるでしょう。

誰もが一度は「耐震強度」という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、意味は読んで字のごとく「地震に耐えることのできる強度」です。日本ではこの耐震強度を一つの指標とし、地震に耐えうる強い家を建てようという意識が根づいています。大きな転機となったのは、1981年に建築基準法施行令の改正によって新耐震基準が施行されたことです。それ以降に建てられた住宅はすべて“耐震基準を満たした家”という位置づけになっています。

しかし、1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震など、震度6を超えるような大規模な地震が、ここ20年の間だけでも日本各地で頻発しています。そのたびに多くの人が地震の恐怖を実感しているかと思います。そして、上記で挙げたような規模の地震は新耐震基準が施行された1981年時の想定を大きく超えるものであり、耐震基準を満たしているから安全であるということはまったくいい切れないのが現状なのです。

耐震・免震・制震のそれぞれの特徴について

もはや耐震のみでは住宅の安全が完全に保証できるとはいえないだけに、住宅建築においても技術革新が求められてきました。そして近年、大地震がきたときでも建物の倒壊や損害を防ぐために耐震と同様に重要だと考えられているのが、「免震」と「制震」です。耐震・免震・制震は、地震の脅威から家を守るための技法であることは変わりありませんが、それぞれ特徴が異なります。地震に強い家を建てるためには、まずは耐震・免震・制震の違いについて理解するところから始めましょう。

耐震建築基準法で定められている地震対策として建物を堅強につくり、地震に耐えること目的とした構造。壁の量を増やしたり、接合部を強固にしたりして建物自体の強度を上げることを目的としています。
免震基礎と建物の間にゴムなどの緩衝材を入れるなど、地盤から建物に直接的にエネルギーが伝わらないようにすることで構造。地震の揺れを受け流して建物に伝わりにくくすることを目的としています。
制震数ヶ所の壁の中に配置したダンパーと呼ばれる装置によって、建物自体が起こす揺れの増幅を抑える構造。専用装置が地震時に少しだけずれるように動くことで地震の揺れを吸収し、建物の変形を防ぎます。

上記のように建物自体の強度を高める「耐震」と、地震のエネルギーを吸収して建物の倒壊や損傷を防ぐ「免震」と「制震」はそれぞれの構造は異なるものの、地震による自宅の被害を最小限に留めるための建築技法であることは変わりありません。度重なる地震の経験を教訓にすることで、日本の建築は“地震に強い家”を実現すべく日々進化しているのです。

制震・免震

さまざまな条件を考慮したうえで建築技法の選択を

地震対策の新しい考え方であり、建物の揺れを軽減する建築技法である免震・制震。従来までの耐震と合わせて、今後は居住者の方のニーズに合わせて建築技法を選択していく時代になりました。以前よりも地震による倒壊や損傷の可能性は低くなりましたが、南海トラフ地震や首都直下型の大地震がいつ起こるとも限らないので、これから住宅を購入しようと考えている方は地震対策に関するリテラシーを高める必要があります。

基本となる耐震・免震・制震のすべてが備わっている家を建てることが理想ですが、建築にかかる費用がかさんでしまうのが難点であり、完璧な地震対策を施すことはなかなか難しいのが現状です。そのため、注文住宅を建てようと考えている土地の強度を把握し、どんな地震対策が必要なのかを事前に調べておくことが大切です。

たとえば地盤が強い土地であれば耐震のみを選択し、軟弱で免震が採用できない地盤の土地では耐震と制震を選択するなど、それぞれの土地のシチュエーションに合った建築技法を選択するようにしましょう。いつ訪れるかもわからない大地震。ご自身や大切な家族の安全を守るためにも、家づくりにおける地震対策は真剣に考えなければいけないのです。

賢い選択を